私のおばあちゃんに聞いた話です。昔、カラスは今のように黒くはなかったのです。カラスは真っ白でどの動物より優れた能力を兼ね備えていました。どんな鳥よりも早く飛べ、どんな動物よりも素早く行動出来ました。森の動物たちには羨望の対象でした、森の動物たちが、どうしてそんなに速く飛べるのか不思議に思いカラスの秘密を探ることにしました。その秘密は、山の奥にある「カラス瓜」の実を羽や体に塗るとどんな動物よりも速く飛ぶことが出来るというものでした。しかし、いまのカラスと同じところもありました。それは、ズル賢いというところでした。白いカラスは大空をだれよりも早く飛び、素早く行動出来たので森の動物たちへの謙虚さを忘れ、日々傲慢さが助長されました。あまりにも傲慢さが過ぎるため、ある日、天の神様が素早く飛んでいるカラスを目掛け天から大きな手でカラスを叩きました。するとカラスは地面の沼にたたき落とされ、全身が真っ黒になってしまいました。今でもカラスが黒いのは、神様に叱られ沼に落とされたからです。そして、今でもカラスは大空を悲しそうな声で「カアーッカアーッ」とゆっくりと飛んでいるのです。
もちろん、こんなに難しい話し方をしたのではありません。おもしろおかしく子どもたちの反応を見ながら脚色も交えながら話しました。何個かのカラス瓜を手元に置いて話したのですから子どもたちも真剣に耳を傾けてくれました。その話しの中に出てくる「カラス瓜」を実際に目の前にして、運動会という目の前にある目標のため、子どもたちはより速く走りたい、より速く動きたいという願いがあります。実際の体験のなかでより速く走ることを経験出来る子どももいますが、そんなに走るのが得意ではない子どもにとっては運動会をみんなで頑張るということはなかなか難しいのが現実です。しかし、毎年私が話す創作話でほとんどの子どもたちが速く走ることに希望が持て、自分自身を奮い立たせるきっかけになってくれればと願い毎年山へ出かけ「カラス瓜」を夢中になって採ってきます。