2009年7月3日金曜日

剣作り

 前園長が子どもたちのためにコツコツと続けていた竹の剣作りを始めました。前園長が他界してからすぐに剣作りを引き継ごうとも考えましたが、子どもたちにとって前園長との剣作りは何だったのかを確かめたくて今まで時間が過ぎてしまいました。
 以前、子どもたちは前園長の作った剣を大事そうに抱え、ごっこあそびや作ってもらう時の前園長との関わりや自分の考えを前園長に伝え、こんな剣が欲しい、ここにこう竹をつけて欲しいと要求し、自分の考えの基に自分たちの剣を作ってきました。実にその数は100種類以上に及ぶまでになり、子どもたちの作ることへの要求の高さに驚きを感じたものでした。
 まねることは学ぶことの実践を前園長は竹の剣作りで実践していたと言っても過言ではないと感じました。当然、子どもたちの目の前で子どもたちの要求する剣を作っていたのですから子どもたちは刺激を受けない訳はありません。物作りの実によい見本が目の前に展開されるのですから、子どもたちも自分のアイデアを出したり、自分で工夫したもの、自分だけのものを作るということにつながっていたことは間違いありません。道具を使い自分たちの思いを実現できることは、子どもたちの思考を発達させ、しなやかな手を獲得していく基本に位置づけられると前園長は確信していたのでしょう。まさに、金井幼稚園の教育の根幹に位置づいている子どもの教育に他ありません。
 「園長先生はなんでも作れてすごいな」私の所へ剣を作ってもらいに来たりブーブー笛を作ってもらいに来たりする子どもが、心からつぶやく言葉がこれです。前園長のように多少は子どもたちのあこがれ(もの作りのよい手本)に多少は近づいているのかなとも思います。でも、前園長は20年以上も子どもたちに相対してきました。まだまだ足もとにも及ばないことは理解します。しかし、子どもたちと対話し、子どもたちと身近で心のやり取りをここ数週間やってきました。確実に解ったことが一つあります。子どもたちの作ることへの意欲や思考の柔軟性は以前の子どもとなんら変化していないということです。そして、子どもたちは作ることのすばらしさを自ら体験していってくれることでしょう。しかし、変化したことも感じました。継続的に剣の扱いをこの子どもたちは積み重ねていないこと、以前の子どもたちは長年竹の剣を生活の中に位置づけてきました。しかし、ここ数年この竹の剣の文化を継承していないこともあり、とにかく持つことがうれしく、その気になって振り回したりしています。一人ひとりに丁寧に友だちをこれでぶったらもうこれから絶対に作らないよと言っています。当然、保育を担う保育者たちも金井幼稚園の教育の根幹にかかわることですので丁寧に子どもたちに伝えていってもらえることでしょう。決して子どもたちが理解できないものではないと思っていますし、排除することでせっかくの教育する機会をも失ってしまうと思うからです。
 毎日、子どもたちの要求に応え5〜60本もの剣の用意をし、元りす組で作っています。始めはシンプルな剣でしたが、だんだん子どもたちのアイデアの要求が増え、短かったり長かったりギザギザが増えたりしています。これからも子どもたちの要求に応えていくつもりです。子どもたちの作ることへの喜びや剣の文化の根付きをお母さんたちにも見守って欲しいとおもっています。決して人を傷つけるために竹の剣を作っているのではありません。